小児の診療にあたっては、お子様の成長を考慮に入れた診療、またお子様に特有の疾患の診療をすることが必要になります。
もちろんこれは耳鼻咽喉科領域においても同じで、そのために小児耳鼻咽喉科という診療科が不可欠になってくるのです。
小児においても、耳、鼻、のどの疾患は耳鼻咽喉科のいちばんの得意領域であることを、しっかり認識しておいていただきたいと思います。
耳については、遊び感覚で構いませんので、背後からささやくように声をかけ、お子様の反応をみて、耳の聞こえが悪くないか注意してあげてください。
鼻やのどについては、寝ているときの呼吸状態に注意を向けてください。
普段の生活では特に気づかなくても、睡眠中に鼻呼吸に問題があると、口を開けて呼吸しており、いびきをかくことが多くなります。
また、粘っこい鼻みずが出て、口で息をしているようですと、耳に影響して中耳炎になっていることがあります。
最も一般的な中耳炎で、生後6ヶ月~5歳くらいまでの子どもに多くみられます。風邪を引いた際に中耳に細菌やウイルスが入り込み、急性の炎症が生じて膿が溜まります。赤ちゃんの耳管は太くて短いので、鼻やのどのウイルスや細菌が容易に中耳まで入り込んでしまいます。黄色い鼻みずを出しているような場合はよく注意しましょう。乳児などでは機嫌が悪くなってぐずったり、しきりと耳に手をやったりします。軽症の場合は抗生剤や消炎剤などの服用や、炎症をやわらげる薬液を点耳することで治療します。膿が溜まって鼓膜の腫れがひどく、痛みが強いときや、熱が高い場合は鼓膜を少しだけ切開して、溜まっている膿を排出します。鼓膜はすぐに再生するので、聴力に問題が生じるようなことはありません。切開して膿を出したほうが、痛みや熱が早く取れ、治りも早くなります。
鼓膜の奥の中耳腔に滲出液という液体が溜まる疾患です。粘り気のある液体が溜まることが多く、聴力の低下もよくみられます。子どもに多い病気ですが、成長するにつれて次第に起こらなくなってきます。耳の痛みは伴わないため気づくのが遅くなってしまうこともしばしばです。放置すると、言葉の遅れが生じたり、教師の言うことが聞き取りづらくて勉強が遅れたりします。治療では、鼻から耳に空気を送る耳管通気という処置をしたり、鼓膜を切開して、中に溜まった滲出液を出したりします。症状を繰り返すようなら、鼓膜にチューブを入れる手術を行うこともあります。耳管の機能が良くなる小学中高学年までの気長な治療が必要になるケースもあります。
小児の鼻の副鼻腔という場所に炎症が起きた状態です。治療が必要となるほどの急性副鼻腔炎は稀なので、通常は副鼻腔の炎症が慢性化したケースを小児副鼻腔炎と言います。症状では、鼻づまりと鼻みずがよくみられます。においがわからない、鼻みずがのどに回るなどの訴えはあまり聞きません。アデノイドの増殖やアレルギー性鼻炎が加わることがしばしばで、これが鼻づまりをさらにひどくさせ、いびきや口呼吸を招くこともあります。治療は、ケースに応じて鼻みずの除去、抗生剤の投与などが行われます。
最近では花粉症をはじめとするアレルギー性鼻炎の発症の低年齢化が進んでいます。子どものアレルギー性鼻炎の場合は、成人に比べて鼻づまりが多く、くしゃみが少ない傾向があります。また、目の痒みや充血などの症状が、成人に比べて強く現れがちです。気管支喘息やアトピー性皮膚炎、副鼻腔炎、扁桃肥大などの合併症がよくみられるのも特徴的です。
アレルギー疾患の治療の基本は原因抗原除去・回避と薬物医療です。
当院では、20分で結果がわかる『イムノキャップラピット』という、アレルギー性結膜炎、花粉症(アレルギー性鼻炎)、の主な原因となる8項目のアレルゲンに対する反応が一度に目で見てわかる検査です。
指先から少量の血液を採取し、20分待つだけの簡単な検査ですので再来院の必要はありません。お子さんでも泣くことはほとんどないので、安心して検査を受けていただくことができます。
こんな症状はアレルギーかも
アレルギー度チェックをしてみましょう。
このような方は20分でわかるアレルギー検査をしてみませんか。
くわしくは医師・スタッフまでおたずねください。
のどは細菌やウイルスによる感染を起こしやすいため、その粘膜下には、リンパ組織(リンパ球と抗体の産生を行う組織)が発達しています。このリンパ小節の集まりを扁桃と言い、口蓋垂(のどちんこ)の両側に見えるアーモンドの形をした部分を口蓋扁桃と呼びます。この口蓋扁桃が通常よりも大きくなった状態が、扁桃肥大です。扁桃肥大を招く主な原因は、細菌とウイルスの感染です。時に、生理的に大きくなっているケースもあります。軽度なら自覚症状はありませんが、気道(鼻から肺までの空気の通り道)を狭くするため、いびきや睡眠時無呼吸症候群の原因となることがあります。治療は、抗生剤(細菌が原因の場合)や痛み止めなどの薬物療法が中心になります。長期間にわたって肥大・閉塞症状が持続したり、感染症を繰り返したりするようなら、手術で摘出します。
鼻の奥にある咽頭扁桃というリンパ組織が、通常よりも大きくなった状態です。アデノイドは3歳頃から増大し始め、6歳頃に最も大きくなります。幼小児期に働きが活発ですが、10歳を過ぎると急に小さくなります。鼻腔と咽頭の間が閉塞することにより、鼻づまりやいびきなどの症状が現れます。乳児では、哺乳がうまくできなくなることもあります。口で呼吸するために、しまりのない顔つきになります。また、難聴や注意力散漫、行動に落ち着きが無い、などの症状も現れます。睡眠時無呼吸症候群の原因にもなりえます。アデノイドは年齢とともに萎縮し、通常は小学校高学年になれば自然に小さくなるので、症状が軽ければ積極的な治療は行いません。しかし、症状が強い場合には、薬物の効果はあまり期待できませんので、アデノイド切除術を行います。
扁桃炎とは口蓋垂(のどちんこ)の左右に一個ずつある口蓋扁桃というリンパ組織に、細菌やウイルスによる急性の炎症が起こる疾患です。子どもに多く見られる溶連菌感染症はリウマチ熱や急性糸球体腎炎、アレルギー性紫斑病などの怖い合併症を引き起こすことがあり、要注意です。風邪のような症状と強い咽頭痛が現れます。のどの奥を見ると、両脇が赤く腫れているのが観察されます。これが扁桃炎に特徴的な症状と言えます。治療は、抗生剤や消炎鎮痛薬、うがい薬などを用います。安静や水分の補給も大切です。
流行性耳下腺炎は、ムンプスウイルスにより耳下腺が腫脹する感染症です。片側あるいは両側の耳たぶから耳の前の顎ラインに沿っての腫れや痛み、発熱、痛みに伴う食欲不振などがみられます。鼻や口を通して鼻・咽頭部からウイルスを取り込むことにより感染します。最も多い合併症は髄膜炎で、髄膜脳炎、睾丸炎、卵巣炎、難聴、膵炎などを発症する場合もあります。症状としては、耳下腺や顎下腺の腫れや圧痛、飲み込む際の痛み、発熱などがみられます。治療は、症状に応じた対症療法が中心となります。予防に効果的なのが、ワクチン接種です。任意接種ですので、希望の際は医師に相談しましょう。
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